細菌の分類は、共通の性状に基づいて細菌をグループにまとめることで行われています。性状には、細胞の形、構造、グラム染色に対する反応、成長特性、代謝、DNAなどがあり、培養可能な特定の菌株(strain)のうち、共通の性状を有するものが1つのグループにまとめられ、それが「種(species)」という分類階級になります。さらに、共通の性状をある程度有する複数の種は「属(genus)」という分類階級のグループにまとめられます。このように、細菌の分類体系は階層的にグループ化が行われており、属より高次の分類階級には、順に「科(family)」、「目(order)」、「綱(class)」、「門(phylum)」があります。また、最高次の分類階級として一般的に使用されている「ドメイン(domain)」は、分類階級を表す名前として正当ではありませんが、世界的に広く浸透しています。
細菌の種の学名は、属名と種形容語を組み合わせた「二名法」で表記され、これにより学名から細菌の分類体系の位置を知ることができます。学名はラテン語の扱いとなるので、イタリック体(斜字体)で表記し、属名は最初の文字を大文字とすると決められています。
しかしながら、自然界に存在する細菌の多くは実験室での培養が難しく、性状を調べられないため、分類が定まっていない細菌がいまだに多く存在します。この現状を変えるため、世界中の研究者によって細菌の分類に関する研究が日々進められており、細菌の分類体系が今後さらに充実していくことが期待されています。
一方、研究の結果によっては、これまでの分類が不適当だと判明することもあります。その場合は再分類が行われ、細菌の分類体系の位置が修正されます。また、同時に学名も変更されるので混乱しないように注意が必要です。
近年行われた腸内細菌に関係する重要な再分類としては、2019年に提唱されたBacteroides属の再分類(以前はBacteroides属とされていた11種がPhocaeicola属の11種として再分類)と、2020年のLactobacillus属の再分類(以前はLactobacillus属とされていた8割近く(200以上)の種が別の24属の種として再分類)があります。さらに、再分類ではありませんが2021年には細菌の42門の名称が訂正されました。