細菌の中には運動性をもち、移動することが可能なものが存在します。
多くの細菌はその運動性のためにべん毛という繊維状の構造を用います。多くの運動性のある細菌はべん毛を使って動きますが、べん毛以外の仕組みで固形物の表面を滑走する細菌もいます。 ▶▶▶
細菌の細胞にはいくつかの異なる形があります。
棒状の細菌を「桿菌(かんきん)」、球状の細菌を「球菌」と呼びます。
その他にも、らせん状や糸状など特徴的な形状をもつ細菌がいます。
腸内細菌では桿菌と球菌が大部分を占めています。 ▶▶▶
いくつかの細菌では芽胞(がほう)と呼ばれる特徴的な構造体を細胞内につくります。
芽胞の中には生存に必要なDNAなどが格納されています。
芽胞は厳しい環境下で生き抜く(長期間休眠する)ための構造であり、熱、乾燥、酸、消毒剤、放射線などに対する高い抵抗力をもちます。 ▶▶▶
グラム染色は、1884年にデンマークの細菌学者グラムによって発明された細菌を色素によって染色する方法で、細菌を分類する基準のひとつです。
グラム染色により紫色に染まる細菌をグラム陽性菌、赤色(ピンク色)に染まる細菌をグラム陰性菌に大別します。 ▶▶▶
腸内細菌の多くは、ヒトには消化できない多糖類(食物繊維など)を代謝し、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸や乳酸、ビタミン類、炭酸ガス、水素、メタンなどを産生します。
腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸や乳酸は、私たちの健康維持に大きく役立っていることが明らかになっています。 ▶▶▶
次世代シーケンサー(NGS: Next Generation Sequencer)は、高速かつ高精度でDNAやRNAの塩基配列を決定するための最新技術です。
従来のサンガー法と比較して、非常に多くのデータを短時間で取得できるため、遺伝子研究や医療分野で広く利用されています。 ▶▶▶
シンバイオティクス(synbiotics)」とは、健康の維持に役立つ生きた細菌であるプロバイオティクスと細菌の栄養源であるプレバイオティクスを組み合わせて摂取することを意味します。
その相乗効果(synergism)によって、さらなる健康増進効果を得ることが期待されており、食品メーカーをはじめ多くの企業で日々研究が進められています。 ▶▶▶
細菌は、生育に酸素が必要な「好気性菌」と、酸素が必要ない「嫌気性菌」に分けられます。
さらに細かく分類すると、酸素が必要な「偏性好気性菌」、低濃度の酸素を好む「微好気性菌」、酸素があってもなくても生育できる「通性嫌気性菌」、酸素があると生育できない「偏性嫌気性菌」に分類することができます。 ▶▶▶
腸内細菌の占有率は、個人の腸内細菌叢(腸内フローラ)において特定の細菌が占める割合を示します。
例えば、ある人の腸内細菌叢のうち35%をある細菌が占めている場合、その細菌の占有率は35%となります。 ▶▶▶
私たちの腸内には1,000種以上、10~100兆個程度の腸内細菌が共生しており、重さにして約1.5kgと考えられています。
腸内細菌はそれぞれテリトリーをもって生息しており、その全体を「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と呼んでいます。多種多様な腸内細菌が、腸壁にまるでお花畑(フローラ)のように群生している様子から、「腸内フローラ」とも呼ばれています。 ▶▶▶
腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスが乱れた状態を示す言葉として「ディスバイオシス(dysbiosis)」という言葉が用いられます。
ディスバイオシスは、さまざまな疾病と関連すると考えられており、具体的には、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)、代謝性疾患(メタボリックシンドローム、糖尿病、非アルコール性脂肪肝など)、自己免疫疾患(喘息、アレルギーなど)、精神・神経系疾患(自閉症スペクトラム、うつ病、アルツハイマー型認知症など)との関連性が示唆されています。 ▶▶▶
健康の維持に役立つ生きた細菌やその細菌を含む食品を「プロバイオティクス」、特定の有益な腸内細菌の栄養源となり、宿主の健康維持に役立つ食品・成分は「プレバイオティクス」と呼ばれています。 ▶▶▶
細菌の分類は、共通の性状に基づいて細菌をグループにまとめることで行われています。
性状には、細胞の形、構造、グラム染色に対する反応、成長特性、代謝、DNAなどがあります。
細菌の分類体系は階層的にグループ化が行われており、高次の分類階級から順に、「ドメイン(domain)」、「門(phylum)」、「綱(class)」、「目(order)」、「科(family)」、「属(genus)」、「種(species)」、「株(strain)」となっています。 ▶▶▶
腸内細菌の保有率は、対象者全員のうち特定の細菌を保有している人の割合を示します。
例えば、特定の細菌が100人のうち50人の大便検体中から検出される場合、保有率は50%となります。 ▶▶▶
腸内細菌叢(腸内フローラ)の検査では、大便検体中に存在する細菌のDNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて、そのDNAの塩基配列を調べます。
この塩基配列を細菌の塩基配列データベースと照らし合わせることで、細菌を特定することができるのですが、その塩基配列に一致する、もしくはよく似た配列が登録されていない場合があります。
このような塩基配列は 、「Unclassified」(現時点ではデータベースに登録のない未知の細菌)として区分されることになります。 ▶▶▶