腸内細菌叢から考える花粉症対策!‐花粉症の新たな治療法とは?‐

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多くの人が悩むつらい花粉症。
 
その発症には腸内フローラとも呼ばれる腸内細菌叢が関係しているようです。
 
また、乳酸菌やビフィズス菌は花粉症の新たな治療法として利用できることが期待されています。
 
ここでは、花粉症と腸内細菌との関連をご紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.花粉症の基本
    1. 1.1.花粉症の患者数
    2. 1.2.花粉症の時期
  2. 2.花粉症の治療方法
  3. 3.新しい花粉症の治し方?乳酸菌が花粉症の治療法に
  4. 4.花粉症になるメカニズム
    1. 4.1.花粉症を発症するきっかけ
  5. 5.花粉症には腸内環境が関係している
  6. 6.腸内環境を整えるには
  7. 7.腸内細菌叢を調べて花粉症対策
  8. 8.参考文献


花粉症の基本

花粉症とは、花粉を抗原とする季節性のアレルギー疾患です1)
 
くしゃみ、鼻水、鼻づまり等のアレルギー性鼻炎や、目のかゆみ、流涙などのアレルギー性結膜炎が主な症状で、まれに喘息やアトピーの症状を併発することがあります。


花粉症の患者数

2019年の全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査では、花粉症の有病率は42.5%と報告されています2)
 
その中でもスギ花粉症の人が多く、有病率は38.8%でした。
 
調査からは日本人の3人に1人がスギ花粉症と推定され、多くの人がスギ花粉症に悩まされているのがわかります。


花粉症の時期

花粉症の主な原因であるスギの花粉は2月から4月頃の春を中心に飛散し、秋にも少量の花粉が飛散することがあります1)
 
他にも同じ春の時期にヒノキの花粉が飛散し、花粉症の原因となります。
 
カモガヤやオオアワガエリなどのイネ科の花粉は種類が多いために春から初秋までの長い期間飛散します。
 
ブタクサやヨモギなどのキク科とカナムグラの花粉は夏の終わりから秋にかけて飛散しています。
 
ほぼ一年を通して何かしらの花粉が飛散しており、春以外の季節にも花粉症に悩まされる場合があります。


花粉症の治療方法

花粉症を治療する方法としては、薬物療法が一般的で、経口薬では抗ヒスタミン薬がよく用いられます。
 
しかし、薬物療法は症状を軽減させる対症療法であり、残念ながら治癒に至らせる根治療法ではありません。
 
近年、根治療法につながると期待されているのがアレルゲン免疫療法です。
 
アレルゲン(抗原)となる花粉を治療に用いて、アレルゲンに対する反応を減弱させることにより炎症反応を低下させ、花粉症の症状を抑えます3)
 
これまでに、スギ花粉症を対象としたアレルゲン免疫療法として舌下免疫療法(舌の下にスギ花粉抽出エキスを投与)が実用化されています。
 
ただし、スギ花粉症を対象とした舌下免疫療法は、治療期間が3~5年と長期にわたることや、治療効果が得られない患者が一定の割合で存在するなど、残念ながら課題もあるようです4)


新しい花粉症の治し方?乳酸菌が花粉症の治療法に

腸内細菌としても知られる乳酸菌やビフィズス菌が、私たちの健康に有益であることが明らかになってきていますが、これらのうちの特定の菌株は抗アレルギー活性を示します。
 
その作用機序の1つとして、菌体の構成成分がマクロファージや樹状細胞などに認識されることで自然免疫系の活性化と免疫のバランス調整につながり、それによりアレルギーが緩和されると考えらえています5),6)
 
このような菌株は花粉症についてもその症状を改善することがわかっています。
 
例えば以下の菌株をプロバイオティクスとして摂取した場合、スギ花粉症患者の症状をある程度改善することが報告されています7)
 
Lactobacillus paracasei KW3110(ラクトバシラス・パラカゼイKW3110株)
Lactobacillus acidophilus L-55/ L-92(ラクトバシラス・アシドフィルスL-55株とL-92株)
Lactobacillus casei Shirota(ラクトバシラス・カゼイShirota株)
Bifidobacterium longum BB536(ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株)
など
 
上記の菌株を含むヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリメントも販売されているため、商品のパッケージなどでチェックしてみることをおすすめします。
 
また、豆乳を複数株の乳酸菌で発酵させた乳酸菌生成エキスの3年間の継続摂取において、1年目からスギ花粉症の改善が見られたという報告もあります8),9)
 
そのため、乳酸菌生成エキスによる治療法も有望と期待されています。
 
以上から、従来の投薬や舌下免疫療法以外の新しい花粉症の治し方として、将来的には乳酸菌を利用した治療方法が一般的になる可能性があります。


花粉症になるメカニズム

 ここまで、花粉症について治療法も含めお話ししましたが、そもそもなぜ花粉症になるのでしょうか?
 
そこで、花粉症になるメカニズムについて簡単にご紹介したいと思います。


花粉症を発症するきっかけ

飛散していた花粉が体内に入っただけでは、すぐに花粉症になるわけではありません。
 
体内に花粉が侵入した場合、それを異物と認識し、この異物(抗原)に対する抗体がつくられます1)
 
数年から数十年、同じ種類の花粉を浴びることで抗体は花粉症の発症に十分な量になります。
 
この状態を「感作が成立した」と言います。
 
この後に再び同じ種類の花粉が身体の中に入ってくると、過剰な免疫反応が起こり、くしゃみや鼻水、涙などの症状が出現するようになり、花粉症になります。


花粉症には腸内環境が関係している

 上記のように感作が成立することで花粉症が発症しますが、発症には実は腸内環境も関係しています。
 
近年の研究からは、多様性の低下や、特定の種類の腸内細菌の増減を特徴とする腸内細菌叢乱れ(ディスバイオシス)がこの感作に重要な役割を果たしている可能性がわかってきています6),10)
 
例えば、スギ花粉症の人ではBacteroidales目(バクテロイデス目)の腸内細菌が多いことを特徴とするディスバイオシスが起きていることが報告されています。
 
まだメカニズムは不明ですがBacteroidales目が免疫のバランスに影響を及ぼす可能性があるようです6)
 
花粉症にならないためには、花粉症になる前から腸内環境を意識したライフスタイルが重要です。
 
また、すでに花粉症になっている人も例外ではありません。
 
花粉症は複数種の植物の花粉が原因となる場合があり、すでに花粉症の人でも別の植物を原因とした花粉症を発症する可能性があるからです。
 
つまり、将来的に新たな植物の花粉で感作が成立しないよう、日常的に腸内環境を整えて予防に取り組むことが大切です。


腸内環境を整えるには

腸内細菌叢がディスバイオシスを起こさないよう腸内環境を整えるためには、果物や野菜、全粒穀物などの食物繊維を多く含む食品、また、脂質の多すぎない魚、乳製品、肉などをバランスよく摂取することが大切です10)
 
また、乳酸菌を含むヨーグルトなどのプロバイオティクス食品の摂取を意識することもよいでしょう。
 
さらに、腸内細菌叢の状態に合わせ、食生活から積極的な改善アプローチを行うことができれば、より一層の効果が期待できます。


腸内細菌叢を調べて花粉症対策

花粉症対策を目的に、腸内細菌叢を含めた腸内環境の改善や維持に取り組むなら、当社の腸内細菌叢の検査・分析サービス「SYMGRAM」がおすすめです。
 
乳酸菌やビフィズス菌の状態がわかるのはもちろんですが、「SYMGRAM」では腸内細菌叢の観点から花粉症を含む30以上の疾病のリスクを分析することができ、結果に応じて改善に役立つ食品情報を個別に提供しております。
 
大便サンプルから簡単に腸内細菌叢の状態を調べることができ、腸内環境の改善や維持に効果的に取り組むことができるので、是非ご活用ください。


参考文献

1)環境省 花粉症環境保健マニュアル-2022年3月改訂版- https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kenkou/allergy/documents/2022_full.pdf (2022).
2)松原篤 et al. 日本耳鼻咽喉科学会会報 123, 485–490 (2020).
3)大久保公裕. アレルギー 70, 948–954 (2021).
4)神前英明. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 126, 877–879 (2023).
5)指原紀宏. 腸内細菌学雑誌 27, 197–202 (2013).
6)Nomura, A. et al. Allergol. Int. 69, 437–442 (2020).
7)Uchida, K. et al. Pathog. Basel Switz. 11, (2022).
8)伊藤宏文 & 貴家康尋. 診療と新薬 59, 45–51 (2022).
9)Ito, H. & Yasuhiro, S. Cureus 15, e41374.
10)Yamaguchi, T. et al. Allergol. Int. Off. J. Jpn. Soc. Allergol. 72, 135–142 (2023).



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