腸内環境はどのくらいで変わるのか?腸内環境改善のためには継続が重要!

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“腸内環境の改善”や“腸内環境を整える”などの言葉をよく耳にします。
 
これらについて漠然としたイメージはあるものの、よくわからないのが実際ではないでしょうか?
 
このコラムでは、腸内環境の良し悪しが健康にどのような影響を与えるのか、どのような方法で改善できるのか、どれくらいの期間で変わるのか、など腸内環境を整えるために必要な基本知識についてご紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.腸内環境とは何を指すのか?
  2. 2.腸内細菌叢は腸内環境を表す
  3. 3.腸内環境が悪いとどうなるのか?
  4. 4.腸内環境が変わる原因は?
    1. 4.1.食生活の大きな変化
    2. 4.2.病気にかかる
    3. 4.3.抗菌薬(抗生物質)の使用
  5. 5.腸内細菌叢を整えて腸内環境を改善する方法・変わる期間は?
    1. 5.1.食生活の改善
    2. 5.2.プレバイオティクスの摂取
    3. 5.3.プロバイオティクスの摂取
  6. 6.腸内環境を改善し整えるには継続が必要
  7. 7.腸内環境をチェックするには
  8. 8.参考文献


腸内環境とは何を指すのか?

腸内環境というと、小腸、大腸などを含みますが、多くの場合は大腸内の環境のことを指します。
 
腸内環境を形成するのは、大腸の腸管内に存在する様々な種類の腸内細菌(その集まりを腸内細菌叢または腸内フローラと呼びます)とその代謝物、毎日摂取される食事成分、消化管からの分泌物などであり、環境を維持するために多くの要素が複雑に関連して相互にバランスを保っています1)
 
腸内環境が悪いというのは、このバランスが崩れている状態といえます。


腸内細菌叢は腸内環境を表す

腸内環境とは、腸内細菌に加え、上記のような様々な物質を含めたものというのが正しい認識となりますが、腸内環境に対する腸内細菌叢の影響が大きいため、腸内環境≒腸内細菌叢と考えてもよいでしょう。
 
以降は腸内細菌叢を中心にお伝えしていきます。


腸内環境が悪いとどうなるのか?

腸内環境が悪いということは、腸内細菌叢の構成も異常な状態であると言えます。

腸内細菌叢の異常はディスバイオシス(dysbiosis)とよばれ、消化管の炎症性疾患、アレルギー、自己免疫疾患、肥満や糖尿病などの生活習慣病、がん、うつ病、軽度認知障害(MCI)など、様々な疾病と関連があることが近年明らかとなっています。
 
そのため、腸内細菌叢を整え、腸内環境を良好に保つことが健康維持において重要と言えます。


腸内環境が変わる原因は?

腸内細菌叢の構成は個人により異なっていますが、その個人の腸内細菌叢の構成は、成人後、生涯を通じて比較的安定している傾向があります。
 
これは、私たちの身体には内部環境を一定の状態に保ち続けようとする傾向「恒常性」があるためです。
 
このように腸内細菌叢は、基本的には維持されているものですが、食生活の大きな変化や、健康状態の変化、抗菌薬(抗生物質)などの薬の使用などによって変化します。
 
この変化は、腸内環境の悪化につながることもあるので、以下で詳しくお伝えします。


食生活の大きな変化

食事を摂ると腸内細菌叢は変化しますが、日常的に食べているものであれば一時的な変動にとどまり、腸内細菌叢の大きな変化にはつながらないようです。
 
一方で、普段摂らないものを摂るなどの極端な食生活の変化が継続すると、腸内細菌叢の構成は大きく変化します。
 
例えば、1年間の腸内細菌叢の変動を調査した研究では、先進国から発展途上国へ旅行すると旅行期間中は腸内細菌叢が大きく変化したことが報告されています2)
 
また、旅行から戻った後は、2週間で旅行前の元の腸内細菌叢に戻ったとのことです。


病気にかかる

病気にかかることも腸内細菌叢を変化させる可能性があります。
 
例えば食中毒などの感染症にかかった場合、腸内細菌叢が大きく変化することが報告されています。
 
上記と同じ1年間の腸内細菌叢の変動を調査した研究では、調査期間中に食中毒にかかり、それに合わせて腸内細菌叢が大きく変化した人がいました2)
 
食中毒の際、抗菌薬は使用しておらず、食中毒が腸内細菌叢に影響を与えたようです。
 
この腸内細菌叢の変化は追跡期間中(発症後の3カ月)では元に戻らず、腸内細菌叢の構成が違うものに移り変わったことが報告されています。


抗菌薬(抗生物質)の使用

抗菌薬(抗生物質)は細菌の細胞を壊したり、増殖を抑制したりする薬です。
 
そのため、抗菌薬を使用すると腸内細菌もすぐにダメージを受け、腸内細菌叢が大きく変化します。
 
抗菌薬の使用により変化した腸内細菌叢は、多くの場合、その使用後2~4週間以内に元の状態に戻ると考えられていますが、種類によっては1年近く元に戻らない、または元に戻らずに違う構成に変わってしまうこともあるようです。
(コラム「抗生物質 - 薬と腸内細菌の関係①」参照)


腸内細菌叢を整えて腸内環境を改善する方法・変わる期間は?

腸内環境が悪いと考えられる場合は、腸内細菌叢を整えることが重要です。
 
腸内細菌叢を整える方法としては、食生活による改善方法、特定の食品成分が含まれるプレバイオティクス、または、特定の乳酸菌などの有用微生物が含まれるプロバイオティクスを摂取するなどがあります。ここではそれらについて詳しくご紹介します。


食生活の改善

普段の食生活が腸内細菌叢のディスバイオシスを引き起こし、腸内環境の悪化につながっている可能性があります。
 
前述の通り、食生活が変わると、腸内細菌叢、さらには腸内環境が変化します。
 
腸内細菌叢を整えるには、食物繊維を豊富に含む果物、野菜、豆類、穀物、ナッツなどを積極的に摂ることが有効でしょう3)
 
例えば普段摂取しない食品を食生活に摂り入れると、2週間ほどで腸内細菌叢は大きく変化する可能性があります。


プレバイオティクスの摂取

プレバイオティクスは、腸内の有用菌の増殖ならびに活性を促進することで、大腸の腸内細菌叢のバランスを改善・維持し、宿主の健康に寄与する食品成分のことです4)
 
プレバイオティクスとしては、イヌリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などの特定の食物繊維が知られています。
 
多くの場合、プレバイオティクスの摂取は、ビフィズス菌として知られるBifidobacterium属(ビフィドバクテリウム属)や、Lactobacillus属(ラクトバシラス属)をはじめとした乳酸菌の増殖と関連しています。
 
また、プレバイオティクスは、腸内細菌叢の構成に良い影響を与えるだけでなく、有益な代謝物の産生を通じて健康にも良い影響を与えることが示唆されています3)
 
35人の健康な成人を対象とした研究では、14日間プレバイオティクス(フラクトオリゴ糖とガラクトオリゴ糖)を摂取したところ、Bifidobacterium属の増加が観察されました5)
 
しかし、プレバイオティクスの摂取をやめて28日後には、摂取開始前の元の腸内細菌叢の構成に戻り、プレバイオティクスによる腸内細菌叢への影響が失われることが示唆されました。


プロバイオティクスの摂取

プロバイオティクスは、健康に有利に働く微生物を生きた菌として摂取できるものです4)
 
例えば、Bifidobacterium属やLactobacillus属などに属する特定の種類の細菌がプロバイオティクスとして用いられています。
 
プロバイオティクスには、ヨーグルトやサプリメントのような製品として利用できるものもあります。
 
多くのプロバイオティクスは、腸に定着せず、摂取を中止してから14日以上腸に留まることはないとされています6)


腸内環境を改善し整えるには継続が必要

ここまでのことから、冒頭の疑問「腸内環境はどれくらいで変わる?」についての答えを導くと、「改善に取り組めば腸内環境は2週間以内には変わる可能性がある」となるでしょう。
 
ただし、食生活を改善したり、プレバイオティクス・プロバイオティクスを摂取しても、摂取が散発的であったり途中で止めてしまったりすると、改善を実感する前に元の状態に戻ってしまいます。
 
そのため、腸内細菌叢を変えて腸内環境を改善するには、継続的な取り組みが必要なことがわかります。


腸内環境をチェックするには

腸内環境の良し悪しや、その改善を確認するためには、腸内環境の状態を確認したいところです。
 
そこでおすすめなのが、腸内細菌叢を調べること。
 
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さらに、「SYMGRAM」では、腸内細菌叢の観点から30以上の疾病のリスクを分析することができ、結果に応じて腸内細菌叢を整えるためのパーソナルな食品情報が提供されます。
 
腸活の具体的な方針を立てることにも役立つ「SYMGRAM」のご活用を検討されてみてはいかがでしょうか。


参考文献

1)鈴木秀和. 日本消化器病学会雑誌 117, 840–855 (2020).
2)David, L. A. et al. Genome Biol. 15, R89 (2014).
3)Leeming, E. R. et al. Nutrients 11, 2862 (2019).
4)萩達朗. 日本食品科学工学会誌 70, 309–309 (2023).
5)Liu, F. et al. Sci. Rep. 7, 11789 (2017).
6)Hasan, N. & Yang, H. PeerJ 7, e7502 (2019).


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