プロバイオティクスとは?臨床におけるメリットと効果が出るまでの目安

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ヨーグルトや納豆、麹など、日本には古くから腸内環境に有用な発酵食品が根付いています。

これらに含まれる「生きた菌」が、今回のテーマである「プロバイオティクス」です。

本コラムでは、プロバイオティクスの定義から、プレバイオティクス、ポストバイオティクスとの違い、効果が出るまでの期間、そして目的に応じた菌株の選び方について解説します。

患者様への生活習慣指導や、腸内フローラ検査結果のフィードバックにお役立てください。

目次[非表示]

  1. 1.プロバイオティクス定義と要件
    1. 1.1.プロバイオティクスの成立条件
  2. 2.関連用語の整理:プロ・プレ・ポストの違い
  3. 3.プロバイオティクスの主な効果
    1. 3.1.腸内環境の改善とバリア機能の強化
    2. 3.2.免疫機能の調整
    3. 3.3.その他
  4. 4.効果発現までの期間と摂取のポイント
    1. 4.1.効果発現の目安
    2. 4.2.効果が感じられない場合の対応
    3. 4.3.注意点
  5. 5.「通過菌」としての役割
  6. 6.目的別:代表的なプロバイオティクス菌株
  7. 7.まとめ:腸内環境の「可視化」から始めるプロバイオティクス選択
  8. 8.参考文献

プロバイオティクス定義と要件

プロバイオティクス(Probiotics)とは、「人体に有益な作用をもたらす生きた微生物」の総称です。食品としてはヨーグルトやサプリメント、医療現場では整腸剤(医薬品)として広く活用されています。

しかし、すべての菌がプロバイオティクスと呼ばれるわけではありません。国際連合食糧農業機関(FAO)および世界保健機関(WHO)は、以下のように定義しています1

定義 「適正量で摂取された場合に、宿主(ヒト)に健康上の利益をもたらす生きた微生物」

プロバイオティクスの成立条件

科学的にプロバイオティクスとして認められるためには、一般的に以下の条件を満たす必要があります2)

  1. 安全性が保証されていること
  2. もともと宿主の腸内フローラの一員であること
  3. 胃酸や胆汁酸に耐え、生きたまま腸に到達できること
  4. 下部消化管で増殖可能であること
  5. 宿主に対して明らかな有用効果を発揮できること
  6. 食品等の形態で有効菌数が維持できること
  7. 安価・容易に取り扱えること

関連用語の整理:プロ・プレ・ポストの違い

近年、「〇〇バイオティクス」という用語が増えていますが、それぞれの役割を正しく理解することで、より効果的な腸内環境への介入が可能になります。

  • プレバイオティクス(Prebiotics

菌そのものではなく、有用菌の「エサ」となる食品成分です。

オリゴ糖やイヌリンなどの水溶性食物繊維が代表的で、有用菌の増殖や活性化を促進します1

  • シンバイオティクス(Synbiotics

プロバイオティクス(菌)とプレバイオティクス(エサ)を組み合わせて摂取するアプローチです。両方を同時に摂取することで、腸内での働きの相乗効果(シンバイオティクス効果)を狙います。

  • ポストバイオティクス(Postbiotics

プロバイオティクスが産生する代謝産物(短鎖脂肪酸、ビタミン、ペプチドなど)や、菌体成分(細胞壁、死菌体)を指します。

生きた菌でなくとも、宿主の代謝や免疫系に直接働きかけ、有益な作用をもたらすとして近年注目されています3

プロバイオティクスの主な効果

プロバイオティクスは腸内環境を整え、全身の健康に寄与します。

近年では多くの臨床試験報告があり、疾患の予防・治療補助としても期待されています。

腸内環境の改善とバリア機能の強化

糖を分解して乳酸や酢酸(短鎖脂肪酸)などの有機酸を産生し、腸内pHを弱酸性に保つことで病原菌の増殖を抑制します。

また、有機酸は腸管の蠕動運動を促すほか、ムチン分泌やタイトジャンクションの強化を通じて腸管バリア機能を高めます4

免疫機能の調整

腸管免疫系に作用し、免疫バランスを整えます。

特定の菌株は制御性T細胞(Treg)の分化誘導などに関与し、過剰な炎症反応を抑制します。

これによりアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状の緩和や、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の改善にも寄与すると報告されています4

その他

脳腸相関(Gut-Brain Axis)を介したメンタルヘルスの改善、脂質代謝の改善などの効果も研究されています。

効果発現までの期間と摂取のポイント

効果発現の目安

腸内環境の変化や体感(便通、肌の調子、睡眠の質など)が現れるまでには個人差がありますが、一般的に 412週間 の継続摂取が目安とされています5

便通改善に関しては、比較的早期(24週間程度)に変化が見られると報告されています6

効果が感じられない場合の対応

1ヶ月以上継続しても変化がない場合は、以下のアプローチを検討します。

  • 菌種・菌株(Strain)の見直し

    プロバイオティクスの効果は「菌株特異性(Strain Specificity)」が高いため、個人の腸内フローラとの相性が重要です。

    別のヨーグルトやサプリメントに変更し、個人に合う菌を探すことが必要です。

    ただし、効果を見極めるには時間が必要で、1か月程度は継続してから判断するのがよいでしょう。

    腸内フローラ検査を活用するのも一つの方法です。

  • プレバイオティクスの併用

    菌のエサとなる成分(イヌリン、オリゴ糖など)を併せて摂ることで、シンバイオティクスとしての効果を期待します7

  • 摂取タイミングの工夫

    プロバイオティクスは胃酸に弱いため、空腹時と食後を避け、食間または食事の直前など、胃酸の影響が少ないタイミングでの摂取が推奨されます8,9

    ただし、サプリメントの場合は製品の仕様(耐酸性カプセル等)によって推奨タイミングが異なるので、製品の推奨や性質にあわせましょう。

注意点

摂取初期に、ガス貯留、腹部膨満感、軽度の腹痛、一時的な便通変化が見られることがありますが、多くは数日で軽快します10

症状が続く場合や、発疹等のアレルギー症状が出た場合は摂取を中止してください。

また、重度の免疫不全や重篤な基礎疾患がある患者様においては、稀に菌血症のリスクがあるため、主治医による慎重な判断が必要です10

「通過菌」としての役割

重要な点として、摂取したプロバイオティクスの多くは、腸内に永続的に定着することは難しい(通過菌)とされています。

これは腸内フローラが元のバランスを保とうとするためであり、長期間摂取したとしても同様です。

しかし、定着せずとも、腸管を通過する間に腸内環境を整えたり、免疫系を刺激したり、有用な代謝産物を産生したりすることで十分な健康効果を発揮します11

そのため、「毎日継続して摂取し続けること」が重要です。

目的別:代表的なプロバイオティクス菌株

プロバイオティクスは「属名 + 種名 + 株名(Strain)」で識別されます。

目的に応じて、エビデンスのある菌株を選択することが推奨されます。

ここでは目的別に代表的なプロバイオティクス菌株をご紹介します。

①整腸作用を期待する場合

※近年の分類変更により、一部の学名表記が変更されていますが、一般的には旧名で知られています。

上記のようなビフィズス菌や乳酸菌は、腸内で乳酸や酢酸などの有機酸を産生し、腸内を弱酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑え、腸の動きを活発にします12–14

ヨーグルトや発酵乳、漬物、納豆など日常的に取り入れやすい食品にも含まれています。

サプリメントでは、これらの菌株を高濃度で摂取できる製品が多く販売されています。

②免疫機能のサポートを期待する場合

ロイテリ菌やプランタルム菌は、腸管の免疫細胞に作用し、炎症抑制や免疫バランスの調整に寄与することが報告されています15,16

主にサプリメントで摂取でき、風邪予防や口腔・皮膚の健康をサポートする製品もあります。

③メンタルケア・ストレス緩和を意識する場合

ストレス耐性を高め、睡眠の質を改善させる効果が報告されています17

まとめ:腸内環境の「可視化」から始めるプロバイオティクス選択

プロバイオティクスは健康維持の強力なパートナーですが、その効果を最大化するには「個人の腸内環境に合った選択」が鍵となります。

患者様に最適なプロバイオティクスを提案するためには、まず現状の腸内環境を知ることが第一歩です。

例えば、酪酸菌が少ない場合には酪酸菌(または酪酸産生を促す菌)を含む製品を選択するなど、根拠に基づいたアプローチが可能になります。

腸内フローラ検査「SYMGRAM」では、乳酸菌や酪酸菌の割合のみならず、腸内細菌叢から特定の疾病リスクの傾向をレポートすることが可能です。

エビデンスに基づいた個別化医療・予防医療の一環として、ぜひご活用ください。

参考文献

1)Hill, C. et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol 11, 506–514 (2014).

2)C H. et al. Nature reviews. Gastroenterology & hepatology 11, (2014).

3)Salminen, S. et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol 18, 649–667 (2021).

4)Chandrasekaran, P. et al. International Journal of Molecular Sciences 25, 6022 (2024).

5)McFarland, L. V. et al. World J Gastroenterol 14, 2650–2661 (2008).

6)Goodman, C. et al. BMJ Open 11, e043054 (2021).

7)Yoo, S. et al. Int J Mol Sci 25, 4834 (2024).

8)Wang, J. et al. Foods 14, 3076 (2025).

9)Tompkins, T. A. et al. Benef Microbes 2, 295–303 (2011).

10)Maftei, N.-M. et al. Microorganisms 12, 234 (2024).

11)Han, S. et al. Front Cell Infect Microbiol 11, 609722 (2021).

12)Takeda, T. et al. Am J Gastroenterol 118, 561–568 (2023).

13)Matsumoto, K. et al. J Biosci Bioeng 110, 547–552 (2010).

14)宮澤賢司 et al. 日本乳酸菌学会誌 28, 12–17 (2017).

15)Mangalat, N. et al. PLoS One 7, e43910 (2012).

16)Zhao, W. et al. Front Immunol 12, 643420 (2021).

17)Nishida, K. et al. J Appl Microbiol 123, 1561–1570 (2017).

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