腸内細菌叢(腸内フローラ)から推定する疾病リスク~病気の早期発見へ~
近年、腸内細菌叢(腸内フローラ)とさまざまな疾病との関係が注目され、盛んに研究が行われています。
腸内細菌叢と関係があるとされる疾病は消化管の炎症性疾患にとどまらず、アレルギー、自己免疫疾患、肥満や糖尿病などの生活習慣病、肝疾患、心疾患、がん、神経・精神疾患などが挙げられます。
しかし、腸内細菌叢の組成から疾病のリスクを分析する方法はこれまで確立されていませんでした。
腸内細菌叢は1,000 種類以上の多種多様な腸内細菌が相互作用しながら生息している複雑な生態系であるため、疾病との関連性の全体像を捉えることが困難だったからです。
そのようななか当社は、疾病に関係する腸内細菌の組成データから疾病リスクを推定する方法を開発しました。
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構造方程式モデルを用いて分析
この方法では、構造方程式モデル(SEM;Structual Equation Modeling)を用いて疾病リスクを計算しているのですが、このモデルでは、疾病との関連性が示された腸内細菌について、作用が似たものをひとつのグループ(因子)にまとめ、その因子と疾病との関連性を分析します。
前述のように複雑な生態系である腸内細菌叢において、一つひとつの腸内細菌と疾病との関連性のみで腸内細菌と疾病の関連性の全体像を捉えることは困難であっても、複数の腸内細菌が相互作用しながら疾病に影響を及ぼす構造を、複数の腸内細菌によって構成された腸内細菌叢因子として表現することで、腸内細菌叢と疾病の関連性の全体像を分析することが可能となりました。
この方法について、関連する論文が2023年1月に国際学術誌『Frontiers in Microbiology』に掲載されました。論文では女性のアトピー性皮膚炎(以下「アトピー」)を例として疾病リスク分析手法を示しています。
アトピーに罹患している日本人女性45名と健康な日本人女性321名の腸内細菌叢の組成データから、女性のアトピーの発症や増悪には、体内の炎症反応の亢進に関わるAlistipes(アリスティペス)、Butyricimonas(ブチリシモナス)、Coprobacter(コプロバクター)が関与すること、また、アトピーの抑制や緩和には、炎症反応の抑制に関わるAgathobacter(アガトバクター)、Fusicatenibacter(フシカテニバクター)、Streptococcus(ストレプトコッカス)が関与することを特定しました。
そして、前者を腸内細菌叢因子1、後者を腸内細菌叢因子2として疾病リスク推定モデルを作成し、そのモデルに腸内細菌の組成データを投入することで、リスク値が計算できることを示しました。
論文ではアトピーを例としていますが、それ以外の多くの疾病についてもモデルを作成し、疾病リスクを分析することが可能です。
なお、腸内細菌叢は男女で異なることから、疾病リスク推定モデルは男女別、疾病別に作成します。(コラム「腸内細菌叢にも“性差”がある」参照)
疾病リスクを分析する重要性
当社が提供している腸内細菌叢の検査・分析サービス「SYMGRAM」および「健腸ナビ」のレポートには、約30の疾病について疾病リスクを分析した結果が掲載されています。
分析の結果、現在かかっている疾病のリスク値が高い場合、腸内細菌叢がその疾病の原因のひとつとなっている可能性があります。
その場合は、個別に提案される食品(成分)を摂取することで、リスクを下げる方向に腸内細菌叢が変動し、疾病の改善・緩和や再発予防につながる可能性があります。
一方で、現在かかっていない疾病のリスク値が高い場合は、現在の腸内細菌叢に起因してその疾病にかかる可能性があります。
このため、疾病リスク分析を活用することで、未病段階における疾病予防への取り組みや、病気の早期発見につなげることが可能となるのです。
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当社が提供している腸内細菌叢の検査・分析サービス「SYMGRAM」(医療機関向け)および「健腸ナビ」(一般個人向け)では、大腸がんや認知症、アトピー性皮膚炎など、約30種類の疾病リスクを網羅的に分析。
疾病リスクだけでなく、リスクを下げるための食品情報、酪酸菌や乳酸菌やエクオール産生菌の割合、 バランス評価など、きめ細やかなレポートで皆様の健康をサポートします。
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