出産方法による子の腸内細菌叢への影響が続く期間は? - 母子の腸内細菌叢③出産【後編】

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本コラムでは「母子の腸内細菌叢シリーズ」として、妊娠・出産・授乳に至るまでの、母子の腸内細菌叢(腸内フローラ)についてご紹介します。
 
シリーズ第3回にあたる「出産」をテーマとした前回のコラム(前編)では、子の腸内細菌叢が出産方法(経膣分娩もしくは帝王切開) の影響を受けることを説明いたしました。

(コラム「母子の腸内細菌叢③出産【前編】:出産方法が赤ちゃんの腸内細菌叢に影響!?腸内細菌の母子伝播とは 」参照)
 
今回のコラム(後編)では同じテーマをさらに深掘りし、出産方法による腸内細菌叢への影響が続く期間や、子の腸内細菌を整えるための研究についてご紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.出産方法による腸内細菌叢の違いは幼少期にかけてどのように変化するのか
  2. 2.出産方法の違いは成人期の腸内細菌叢にも影響するのか
  3. 3.子の腸内細菌叢を整えるには
  4. 4.最後に
  5. 5.備考
  6. 6.参考文献


出産方法による腸内細菌叢の違いは幼少期にかけてどのように変化するのか


前編でご紹介した通り、経腟分娩と帝王切開とでは子の腸内細菌叢の特徴が異なっています。
 
この出産方法の違いによる子の腸内細菌叢の違いは、徐々に差異が均等化し、生後12ヵ月までにほとんど消失すると考えられています。
 
だだし、帝王切開で産まれた子では2歳までBacteroides属(バクテロイデス属)の多様性が減少、4歳時点でLachnospiraceae(ラクノスピラ科)とRuminococcaceae(ルミノコッカス科)に属する菌群の相対的存在量が減少していたとの報告もあります1)
 

これらの科や属には、免疫系やエネルギー代謝に重要な短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌が属しています。


出産方法の違いは成人期の腸内細菌叢にも影響するのか


別の研究では、出産方法が異なる若年成人を比較すると腸内細菌叢の組成に有意差がみられ、帝王切開で産まれた人ではBacteroides fragilis(バクテロイデス・フラジリス)とLactobacillus sakei(ラクトバシラス・サケイ)の近縁種が減少していたとの報告もあります。
 
Bacteroides fragilisは、免疫寛容を介して腸の炎症抑制に貢献していることが知られています2)
 
また、Lactobacillus sakeiは腸粘膜の慢性炎症性疾患に対する改善効果が報告される3)など、プロバイオティクスとしても注目されている菌です。
 
つまり、これらの研究は、腸内細菌叢に対する出産方法の影響が、場合によっては成人期まで持続する可能性があることを示唆しています。


子の腸内細菌叢を整えるには


帝王切開などによる子の腸内細菌叢の形成不良を積極的に是正する方法も研究されています。
 
母乳育児は、ミルクに比べ子の腸内細菌叢の出産方法による差異を埋めるのに効果的であることが研究から示唆されています。
 
また、プロバイオティクス、特にビフィズス菌(Bifidobacterium属[ビフィドバクテリウム属])を含むプロバイオティクスを母乳育児と併用することで、腸内細菌叢の形成不良を緩和することが可能であると報告されています4)
 
まだ研究段階ですが、母子間糞便移植についても研究が行われており、乳児の腸内細菌叢を是正する効果が実証されつつあります5)


最後に


誕生とともに始まる子の腸内細菌叢の形成。
 
出産をテーマとする本コラム(前編・後編)では、そのスタートが出産にあることをご紹介しました。
 
母から子へ受け継がれる腸内細菌もあることから、妊娠中の母親の腸内環境を整えることは重要です。
 
子の腸内細菌叢は食生活や生活環境、ライフスタイルなど様々な影響を受けて変化するものなので、出産方法による腸内細菌叢への影響を過度に心配する必要はありませんが、ご自身の腸内細菌叢をチェックする機会があれば確認してみましょう。
 
その際には当社の「SYMGRAM」や「健腸ナビ」を是非ご活用ください。
  

備考

*最新の分類ではRuminococcaceaeOscillospiraceae(オシロスピラ科)に、Lactobacillus sakeiLatilactobacillus sakei(ラチラクトバシラス・サケイ)に再分類されています。

参考文献

1)Korpela, K. Impact of Delivery Mode on Infant Gut Microbiota. Ann. Nutr. Metab. 77, 11–19 (2021).
2)Round, J. L. & Mazmanian, S. K. Inducible Foxp3+ regulatory T-cell development by a commensal bacterium of the intestinal microbiota. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 107, 12204–12209 (2010).
3)Seo, S. et al. Anti-colitis effect of Lactobacillus sakei K040706 via suppression of inflammatory responses in the dextran sulfate sodium-induced colitis mice model. J. Funct. Foods 29, 256–268 (2017).
4)Korpela, K. et al. Probiotic supplementation restores normal microbiota composition and function in antibiotic-treated and in caesarean-born infants. Microbiome 6, 182 (2018).
5)Korpela, K. et al. Maternal Fecal Microbiota Transplantation in Cesarean-Born Infants Rapidly Restores Normal Gut Microbial Development: A Proof-of-Concept Study. Cell 183, 324-334.e5 (2020).

 



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