原因は腸の硫化水素産生菌?ゆで卵みたいな臭いのおなら

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においの強いおならが出る、便秘じゃないのにおならが臭い・・・人によっては大きな悩みのひとつではないでしょうか。
 
特に、ゆで卵のような、硫黄のような不快な臭いのおならが続くと不安を覚えることもあります。
 
このような不快な臭いの原因は、おならに含まれる硫化水素が多くなっているためと考えられます。
 
そして、この硫化水素は大腸に存在する腸内細菌によって産生されます。
 
今回のコラムでは、硫黄臭のような不快な臭いのおならの原因と腸内細菌との関係をご紹介いたします。


目次[非表示]

  1. 1.おならの基礎知識
    1. 1.1.1日のおならの量
    2. 1.2.1日におならがでる回数
    3. 1.3.おならの成分
    4. 1.4.おならの成分の由来
  2. 2.おならの臭いの正体
  3. 3.硫化水素産生菌がゆで卵みたいな臭いの原因
    1. 3.1.おならの臭いに関係する腸内細菌
  4. 4. ゆで卵みたいなおならの臭いにつながる食品
  5. 5.ゆで卵みたいな臭いのおならで注意が必要な病気
  6. 6.おならからゆで卵みたいな硫黄臭がするときの改善方法2つ
    1. 6.1.食事でおならの臭いを改善
    2. 6.2.生活習慣で腸内環境を整えておならの臭いを改善
  7. 7.硫黄臭のするおならの臭い改善に向けて腸内細菌叢を調べるならSYMGRAM
  8. 8.参考文献


おならの基礎知識

まずは、おなら(屁)についての基礎知識1)–3)をご紹介します。


1日のおならの量

健康な人の場合、1日におならとして排出されるガスの平均的な総量は600~700 mlで、多い人では約1,500 mlという報告があります2)
 
500 mlのペットボトルで考えると、どれくらいの量なのかイメージしやすいでしょう。


1日におならがでる回数

おならの1日の回数は平均して14回と研究論文で報告されています2)
 
また、25回までは正常の範囲内のようです。
 
睡眠中より日中のほうが回数は多く、特に食後に多くなるとされています。


おならの成分

おならの主な成分は、窒素(N2)、酸素(O2)、水素(H2)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)で、これらがおなら全体の99%以上を占めています。
 
しかしながらこれらの成分は無臭です。
 
では、いったい何が硫黄臭などの不快臭の原因となるのか?
 
実はおなら全体の1%以下、わずかに含まれる硫化水素(H2S)や揮発性硫黄化合物がその原因となります。


おならの成分の由来

おならの成分の窒素と酸素は主に食事の際などに飲み込んだ空気に由来します。
 
一方、残りの成分のほとんどは腸内に存在する腸内細菌の活動によって発生したガスに由来します。


おならの臭いの正体

硫化水素には臭いがあり、その臭気は腐った卵の臭い(腐卵臭)や硫黄の臭い(硫黄臭)と形容されることがあります。
 
まさにおならのゆで卵のような、硫黄のような不快な臭いはこの硫化水素によるものです。
 
悪臭は硫化水素濃度と有意に相関することが研究論文で報告されています4)
 
人間はわずかな量の硫化水素であっても不快臭を感じるため、おならの中の硫化水素の量がわずかにでも増えるとその不快臭を敏感に嗅ぎ取ってしまうでしょう。
 
また、おならには硫化水素以外にも、メタンチオール(CH3SH)やジメチルスルフィド[(CH3)2S]などの揮発性硫黄化合物がわずかに含まれることがあります4)
 
これらもわずかな量で不快臭を発します。
 
メタンチオールとジメチルスルフィドはそれぞれ腐ったタマネギ臭や腐ったキャベツ臭と形容されることがあり、硫黄臭や腐卵臭とは異なる種類の不快臭を持ちます。
 
これらが硫化水素とともにおならに存在すると、形容しがたい不快臭になる可能性があります。


硫化水素産生菌がゆで卵みたいな臭いの原因

ではなぜ、硫化水素がおならに含まれることがあるのでしょうか。
 
おならに含まれる硫化水素は、大腸内に存在する腸内細菌の活動によって発生したものになります。
 
このような硫化水素を産生する腸内細菌は硫化水素産生菌とも呼ばれ、ゆで卵のような硫黄臭の原因だといえるでしょう。
 
以下では硫化水素産生菌について、具体的な菌名をあげて説明します。


おならの臭いに関係する腸内細菌

硫化水素産生菌には、Desulfovibrio属(デスルフォビブリオ属)やBilophila属(ビロフィラ属)に代表される異化的な硫酸還元により硫化水素を産生する硫酸還元菌と、含硫アミノ酸(システイン、メチオニンなど)の分解により硫化水素を産生するFusobacterium属(フソバクテリウム属)などの腸内細菌(硫酸還元菌とは異なる)が含まれます5),6)
 
これらの硫化水素産生菌は、いずれも食事などに由来する含硫アミノ酸を代謝し、硫化水素を産生します。
 
硫化水素産生菌が腸内に多い場合、このような流れで硫化水素が発生するため、おならの不快臭としてゆで卵のような臭いが強くなる可能性があります。


 ゆで卵みたいなおならの臭いにつながる食品

硫化水素の発生には、硫化水素産生菌の存在だけでなく当然ながら食事が大きく影響します。
 
先に述べたように、硫化水素産生菌は含硫アミノ酸を代謝して硫化水素を産生することから、含硫アミノ酸を多く含む食品の摂取は硫黄臭のするおならにつながります。

具体的な食品の例を挙げると、赤身肉、牛乳、卵、チーズなどが該当します6)

つまり、これらの食品の食べ過ぎはおならの臭いに影響する可能性があります。

また、タマネギ、ニンニク、ワイン、キャベツ、ブロッコリー、マッシュルーム、ナッツ類、ジャガイモ、ドライフルーツには硫化物や亜硫酸塩(抗菌剤や抗酸化剤として使用されている場合があります)が含まれ、これらの過剰摂取も硫化水素の大量発生につながる可能性があります7)


ゆで卵みたいな臭いのおならで注意が必要な病気

硫化水素は高濃度であれば、人間の細胞に毒性を示します。
 
これまでの研究からは、硫化水素が炎症性腸疾患(IBD)と大腸がんに関連することが報告されています6)
 
炎症性腸疾患の症状としては、腸管が炎症を起こすことによる慢性的な下痢や腹痛があります。
 
大腸がんは、早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると便に血が混じるなどの症状が現れます。
 
硫黄臭を強く感じるおならが長期間にわたって続いている場合は、炎症性腸疾患や大腸がんのリスクがあるかもしれません。
 
もし症状などに心当たりがあれば、医療機関での検査をお勧めします。


おならからゆで卵みたいな硫黄臭がするときの改善方法2つ

ここからは、おならから硫黄臭がするときの改善方法を2つご紹介します。
 
2つに分けて書いていますが、両方を組み合わせて実践するほうがより効果的でしょう。


食事でおならの臭いを改善

おならの硫黄臭を抑えるには、硫化水素産生菌に硫化水素を多く作らせないようにすることが重要です。
 
方法としては、まず前述の「ゆで卵みたいなおならの臭いにつながる食品」でご紹介した食品の過剰な摂取は控えることが良いでしょう。
 
硫化水素発生のもととなる含硫アミノ酸などの摂取量が減れば、おならに含まれる不快臭の成分(硫化水素)も少なくなることが期待できます。
 
さらに、腸に届く含硫アミノ酸などの量が減れば、それを利用する硫化水素産生菌の増殖も抑えられる可能性があります。
 
一方、ここで紹介した食品を全く摂らないようにすることは逆に健康上問題となるため、あくまでも過剰摂取を控えるだけで、適量を摂取することを心がけましょう。


生活習慣で腸内環境を整えておならの臭いを改善

硫黄臭のするおならが出るときは、腸内細菌叢(腸内フローラ)の異常が起きている可能性があります。
 
腸内細菌叢を構成している腸内細菌同士の関係性のバランスが崩れ、硫化水素産生菌が増えすぎているかもしれません。
 
そのため、食事内容以外の生活習慣を整えることも、腸内環境や腸内細菌叢の改善、ひいてはおならの臭いの改善につながります。
 
生活習慣を整えるには、十分な睡眠時間を確保したうえでの規則正しい生活、三度の食事、適度な運動が好ましいです。
 
また、ストレスをため込むことも腸内細菌叢には悪影響です。
 
おならの臭いを気にしすぎることもストレスをため込むことになり、悪循環につながります。
 
たまったストレスは、カラオケやスポーツ、趣味など自身に適した方法で積極的に発散することが大切です。


硫黄臭のするおならの臭い改善に向けて腸内細菌叢を調べるならSYMGRAM

ここでは、ゆで卵のような硫黄臭のするおならに腸内に存在する硫化水素産生菌が関連することをご紹介しました。
 
おならの臭いにお悩みの場合は、腸内に存在する硫化水素産生菌を一度調べてみると対処法が明確になるかもしれません。
 
当社の腸内細菌叢の検査・分析サービス「SYMGRAM」(シングラム)では、硫化水素産生菌の存在を調べることができます。
 
さらに、「SYMGRAM」では腸内細菌叢の観点から大腸がんや炎症性腸疾患の1つである潰瘍性大腸炎を含む30以上の疾病のリスクを分析することができ、結果に応じて改善に役立つ情報を個別に提供しております。
 
お悩みの解消への糸口として、このようなサービスの活用もおすすめいたします。


参考文献

1)Hasler, W. L. Gastroenterol. Hepatol. 2, 654–662 (2006).
2)Tomlin, J. et al. Gut 32, 665–669 (1991).
3)Granito, M. et al. J. Sci. Food Agric. 83, 1004–1009 (2003).
4)Suarez, F. L. et al. Gut 43, 100–104 (1998).
5)Braccia, D. J. et al. Front. Microbiol. 12, (2021).
6)Mutuyemungu, E. et al. J. Funct. Foods 100, 105367 (2023).
7)Mogilnicka, I. et al. Int. J. Mol. Sci. 21, 2886 (2020).



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