睡眠不足により腸内細菌叢のディスバイオシスが起きる

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睡眠不足は身体によくないものであり、腸内細菌叢(腸内フローラ)にも悪い影響を及ぼす可能性があります。
 
近年の睡眠と腸内環境の関係を調べた研究結果からは、睡眠不足を解消して腸内細菌叢を改善することは、腸内環境を良好な状態に整えるだけでなく、ひいては病気の予防につながる可能性も秘めていることがわかってきています。
 
今回のコラムでは、睡眠不足による腸内細菌叢への好ましくない影響についてご紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.睡眠は腸内細菌叢にも影響する
  2. 2.睡眠不足がもたらす腸内細菌叢の異常
  3. 3.最後に
  4. 4.参考文献


睡眠は腸内細菌叢にも影響する

「夜更かしや忙しさのせいで十分な睡眠時間を確保できずに眠い…。」
 
そのような睡眠不足の経験は誰しもが持っているのではないでしょうか。
 
睡眠時間は1日の時間の約3分の1を占めており、私たちの健康にとって睡眠が不可欠なことは明らかです。
 
この睡眠不足について、実は近年の研究から腸内細菌叢にも影響を及ぼすことが明らかとなってきました。


睡眠不足がもたらす腸内細菌叢の異常

食事や抗生物質が腸内細菌叢に影響を与えることは以前のコラムでご紹介しましたが、睡眠不足も腸内細菌叢を変化させ、ディスバイオシス(腸内細菌叢の異常)を引き起こすことがわかっています。
(コラム「抗生物質 - 薬と腸内細菌の関係①」「ディスバイオシスと疾病の関連性」参照)
 
睡眠不足の人にみられる腸内細菌叢の特徴としては、Bacteroidetes門(バクテロイデーテス門)の減少と、Firmicutes門(ファーミキューテス門)の増加という、腸内細菌叢の大きな変化(門レベルでの変化)が複数の研究により報告されています1)
(門については、コラム「細菌の分類について」をご参照ください)
 
門よりもさらに細かい分類である属レベルに視点を移すと、より具体的な腸内細菌の増加や減少が報告されています。
 
マウスを対象とした研究を2例ご紹介すると、3日間睡眠を絶った研究では、Aeromonas属(アエロモナス属)の増加やAkkermansia属(アッカーマンシア属)の減少などが2)、睡眠不足を繰り返した研究では、Lactobacillus属(ラクトバシラス属)、Bifidobacterium属(ビフィドバクテリウム属)の減少が報告されています3)
 
増加がみられたAeromonas属は病原性細菌として知られており、減少がみられたAkkermansia属やLactobacillus属、Bifidobacterium属は免疫をはじめ健康への有用性が知られています。
 
また、腸内ではαディフェンシン(アルファディフェンシン)という病原菌に対して選択的な殺菌作用を示す抗菌ペプチドが分泌されており、これは腸内細菌叢の恒常性維持に関与します。
 
睡眠時間が短い人ほどαディフェンシンが少なく、これがディスバイオシスや腸内細菌の産生物である短鎖脂肪酸の低下に関係しているとの研究結果もあります4)
 
このような睡眠不足によってもたらされるディスバイオシスは、免疫機能の低下、肥満、2 型糖尿病、高血圧などの代謝系の異常、認知機能の低下など体調不良につながる可能性があることがこれまでの研究から示唆されています3)
 
つまり、睡眠不足はディスバイオシスを誘発し、健康への好ましくない影響につながる可能性があるのです。
 
個人差はありますが、成人の方であれば6時間~8時間を目安に睡眠時間をしっかり確保することをお勧めします5)


最後に

本コラムでは睡眠不足によってディスバイオシス(腸内細菌叢の異常)が起きることをご紹介しました。
 
このディスバイオシスは、様々な疾病につながる可能性があります。
 
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睡眠不足に心当たりがあれば、一度腸内細菌叢の状態を調べてみてはいかがでしょうか。


参考文献

1)Neroni, B. et al. Sleep Med. 87, 1–7 (2021).
2)Gao, T. et al. J. Pineal Res. 67, e12574 (2019).
3)Sun, J. et al. Int. J. Mol. Sci. 24, 9603 (2023).
4)Shimizu, Y. et al. Gut Microbes 15, 2190306 (2023).
5)厚生労働省HP「健康づくりのための睡眠ガイド2023(案)」(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf)



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