エクオールを腸内生成できない理由
近年、その健康効果が明らかになり、注目度が高まっているエクオール。
エクオールとは、女性ホルモンとして知られるエストロゲンに似た働きがある物質で、更年期症状、閉経後の骨粗鬆症、高脂血症、血圧、血管内皮機能、乳がん、前立腺肥大、前立腺がん、肌の老化抑制などにおいて好ましい影響があると報告されています。
大豆製品を食べると、腸でエクオールがつくられますが、それには個人差があり、疫学研究では日本人の約半数がエクオールをつくることができないと言われています。
エクオールをつくることができない人がエクオールのもたらす健康効果を得るには、エクオールのサプリメントを利用することになります。
では、なぜ腸でエクオールをつくることができない人が存在するのでしょうか?
その答えは腸内細菌にあります。
ここでは、腸でエクオールをつくることができる人とできない人を決定づける腸内細菌、エクオール産生菌についてご紹介します。
エクオール産生菌とは
大豆製品を食べると、大豆成分の大豆イソフラボンが腸に到達し、それを腸内細菌が代謝することでエクオールが産生されます。
この腸内細菌が「エクオール産生菌」です。
もう少し詳しく説明すると、複数種存在する大豆イソフラボンのなかでもダイゼインと呼ばれる大豆イソフラボンが、中間体のジヒドロダイゼインを経て、エクオールに変換されます。
このダイゼインからエクオールまでの一連の代謝をすべて行うことができるエクオール産生菌として、Adlercreutzia(アドレクルーツィア)属、Eggerthella(エガセラ)属、Slackia(スラッキア)属などに分類される特定の腸内細菌が知られています。
また、エクオール産生において部分的な代謝のみを行う腸内細菌も存在します。
ダイゼインからジヒドロダイゼインまでの代謝のみを行う腸内細菌や、ジヒドロダイゼインからエクオールの代謝のみを行う腸内細菌がこれまでに報告されています。
このような部分的な代謝のみを行う腸内細菌は、単独ではダイゼインからエクオールをつくることができませんが、それらが腸内に共存している場合は共同でエクオールをつくることができるようです。
ただし、これらのエクオール産生菌が腸に存在しない場合は、大豆製品を摂取しても腸でエクオールが産生されることはありません。
つまり、エクオールをつくることができない人の腸には、エクオール産生菌が存在しない可能性があるのです。
腸におけるエクオール産生菌の有無には食生活が関係する?
欧米およびオーストラリアでは、腸でエクオールをつくることができない人の割合は約7割との報告があります。
それに比べると、日本人はより多くの人がエクオールをつくることができるようです。
では、腸でエクオールをつくることができる人とできない人(エクオール産生菌を保有する人と保有しない人)の違いはなにによって生じるのでしょうか?
これまでの研究によると、性別や遺伝的素因ではなく、食生活の影響が大きいと考えられています。
欧米型の食生活よりも、大豆製品の摂取頻度が高い日本型の食生活のほうがエクオール産生菌の獲得や維持に適しているのかもしれません。
ただし、日本においても年齢が若い人では、腸でエクオールをつくることができる人の割合は低くなる傾向があるようです。
これは、若い人ほど欧米型の食事を好むことが関係しているのかもしれません。
エクオール産生菌を保有していても大豆製品の摂取が必要
腸でつくられたエクオールは、腸管から吸収されます。
その一部は生理活性を発現し、余剰なエクオールは尿中に排泄されます。
エクオール産生菌を保有している人が、原料となる大豆を摂取するとエクオールがつくられますが、つくられたエクオールのほとんどは摂取から72時間程度で体内から消失するようです。
つまり、エクオールの効果を継続的に享受するためには、こまめに大豆食品を摂取することが大切なのです。
参考文献
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石見佳子ほか. 化学と生物 51, 74–77 (2013).
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高橋敦史ほか. 大豆たん白質研究 / 不二たん白質研究振興財団 [編] 22, 118–121 (2020).
当社が提供している腸内細菌叢の検査・分析サービス「SYMGRAM」(医療機関向け)および「健腸ナビ」(一般個人向け)では、大腸がんや認知症、アトピー性皮膚炎など、約30種類の疾病リスクを網羅的に分析。
疾病リスクだけでなく、リスクを下げるための食品情報、酪酸菌や乳酸菌やエクオール産生菌の割合、 バランス評価など、きめ細やかなレポートで皆様の健康をサポートします。
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